Synology DS1618+修理

1. 背景

PCの台数が増えて各PCでデータ共有や、出先からデータアクセスする必要性が高まったためSynology DS1618+を導入してみた。最初使い始めて半年ほどでLEDインジケータが点灯しなくなった。3年保証だったので修理・交換をお願いしたら一週間以上かかり、さらに代替機もないとのことで、その時業務で運用中だったので、仕方なく2台目のDS1618+を購入して、とりあえず修理中は2台目で運用していた。同じ機種・シリーズであればHDDはそのまま入れ替えても使えるようです。その後交換されたものは返ってきたのですが、このようなこともあるので何かあったときのバックアップ用としてしばらくは保管していた。
これまでメインはDSM6.xのバージョンで運用してきたが、wordpressの最新バージョンはDSM 7.xでないと使えないので、お試しに保管しておいたDS1618+を稼働させていろいろ試すことにした。

2. 故障した

一応DSM7.xをインストールしてさてこれからというときにほとんど使っていなかったDS1618+の電源が入らない時がある症状が出だし、電源投入した状態で3か月くらい経ったとき確認したら電源が落ちて二度と電源が入ることはなかった。

3. サポートサービスの塩対応

そこで、さっそくSynology代理店のASKに問い合わせをしたら購入から3年以上経過しているものに対して修理はできないという対応をされた。これはあまり日本の感覚で考えられなかったのですが、3年の保証期間を過ぎたら有償修理というものはなく新品に交換という手段しかないようです。ネット上でもあちこちで取り上げられています。確かに3年使っていれば故障することもあるかなと思う一方、使わず保管していたものは通電はしていないが時間だけ経過してしまって、そのあとで故障しても保証期間が過ぎていれば対応してもらえないのですよね。個人的には経過時間ではなく動作時間で保証期間を定めてほしかったです。
今のところ、Synologyの故障率は100%ですね。2/2ですが・・・
「そもそもHDDが壊れる前に本体がこんなに壊れるってどういうこと?」って思いました。
また、このような危機はPCとは異なりさらに信頼性が要求されるものなので、それなりに信頼性もサポートも手厚いかとは思っていました。確かにS/W面のアプリケーションやサポートがかなり充実しているので、部分的には満足しているものの、H/Wの信頼性とサポートがこれではすべてが台無しですね。まことに残念に感じます。😥

4. 修理してみるか

4.1 分解

代理店の融通の利かない担当者相手に交渉しても時間の無駄になるので、どうせ捨てるのであればちょっと故障したところでも見てやろうかと思ってとりあえず分解・・・

いろいろネジを外しながら分解していく
メイン基板が見えてきた
メイン基板を取り出す。以外に部品が少ない。
電源ユニットは一般的なスモールPCなどで使用されているものっぽいので、これが壊れていたら一般的に入手できそう。Aliexpressも入手できそう。

4.2 要因分析【前編】

さて、今回は基板、電源ユニット含めて壊れた要因あるいは部品を特定していくことになる。これは一番厄介なことで、手元に回路図・基板パターン図・設計書がないので、これまで壊れるまでの予兆と症状で壊れた要因を推測していくことなる。
まずよく故障として考えらえるのは大きく以下の3項目

No.項目一般的な視点対処方法
1コネクタ接触不良       振動などによるコネクタ・ハーネスの断線今回は可動部品もなく、振動も軽微なのでコネクタ接触不良ではなさそう。一応目視はしておく。 
2電源ユニットの不良PCなどでも一番よく故障になるユニット。SynologyのACアダプタ電源供給タイプでもよく故障が発生している模様。正常に動作する電源ユニットと 交換してみてどうなのか確認してみる。
3メイン基板上の部品不良一番やっかい。 基板上の部品でも今回の症状からすると電源系の部品の故障だと推測できる。  製品の構成、ユーザー操作や故障に至るまでの予兆などやシステム構成を推測しながら故障個所を推測してみる。

要因項目(2)について、壊れていないもう一台のDS1618+があるのでその電源ユニットと交換してみた。結果同様に動作しない。これで動作すれば簡単なのだが、結果としては電源ユニットが故障でないことが判明した。ということで(3)のメイン基板上の何らかの故障である可能性が高くなった。

4.3 要因分析【後編】

ということで、さらにメイン基板の要因分析をも少し深堀することにする。
まず故障するとややこしいCPUとかデータ転送周辺部品ではないと仮定する。もし、この辺が要因だったら原因分析は何も資料がない中では不可能だと思ったので、メインボード電源系に的を絞ってみていくことにした。

4.3.1 故障までの予兆

故障するまでの予兆として電源ONしても電源ONしない時があった。時間をおいてもダメで、AC電源を抜いて15分後に電源を入れたら正常に起動した。
この動作から当社バリスタなど過電流を保護する素子、あるいは回路が働いて”ほとぼり”が冷めたころに電源ONしたら復帰するものだと思っていた。その後、調べていくとそのような回路がなかったので、「保護回路過剰反応説」の可能性は低くなった。

4.3.2 基板上にあるLEDインジケータ

基板上にD9,D10のLEDインジケータがあり、正常/異常時の動作は以下のような感じ

動作状態LED9LED10
正常時点灯点灯
異常時(電源入らない時)点滅消灯

4.3.3 電源システムを妄想

このNASはタクトスイッチを押すことで電源を投入する形式をとっている。 とういことはATX電源の[+5V standby(紫)]からまずは電源を引き込んでそこから全体に電源をONする回路に起動するようになっていると推測。

また基板上で必要な電圧の電源を生成するのにTIの以下の部品を組み合わせた同期型降圧DCDCコンバータが用いられているこがわかった。
tps53626     制御用
CSD95375Q4M MOSFET(power stage)
メイン基板の電源ブロックとしては以下のような構成になっていると推測。

Figure 4 2 推測した電源システムブロック概略図

実際の物理結線は異なるとは思うが、論理的な制御主従関係はほぼこんな感じだと思われる。

Photo 4 1 CSD95375Q4Mは赤丸したところに使用されていた。

想定したブロック図のようになっていたらCSD95375Q4Mの5pin(VIN)にSW ONする前に5Vの電圧が印加されているはず!ということでまず、「5V standby」から直接引き込んでいる電源を探してみた。

Figure 4 1  CSD95375Q4Mのブロック図

メイン基板上に複数実装されているCSD95375Q4Mの中で U14の部品だけVINに5Vが印加されているのが判明。
また、電源関連の故障で一番多いのはやはり大電力を扱うスイッチ部品だと思うので、この部品の入出力信号を調べることにした。おそらくタクトスイッチがONされるとDCDCコンバータの制御用のtps53626でPWMを発生させてCSD95375Q4Mの8pin PWM INに入力されるはずだと思いこの系統をチェックしたら思った通りSWONすると制御IC側からはPWM波形が出ていることを確認できた。

信号や入力電源が入っているのを確認すると、SWON動作に合わせてCSD95375Q4Mの4pinからFETスイッチング動作で生成した所望の電圧が出るはずなので、ここをチェックしてみた。そしたら電圧が出ていないことが判明!

つまりU14のCSD95375Q4Mは壊れた可能性が非常に高いことが分かった。
まぁ、ここまでわかったらダメ元でこの部品を入手して交換してみることにした。もし、交換してもダメだったらほかのところと複合要因で壊れた可能性もあるが、その時はそれ以上の解析は面倒なのでやめておこうと思った。

5. 部品の交換

一週間ほどで注文していたCSD95375Q4Mが入着。10個送料込みで \3,900くらい
ブロアであぶって部品を取り去る。 結構熱量が大きいので一苦労・・・

直った!

基板上のLED D9,D10も正常に点灯していることも確認した

6. あとがき

今回はCSD95375Q4Mの部品単体の故障という原因だった。
こんなの素人でも修理できたので、少しくらい修理などに対応してくれてもいいかとは思いました。”(-“”-)”
パターンを見る限り熱設計も真面目にしてそうだったし、電流設計に設計マージンがなかったのか、ホンマに部品不良だったのか真意は不明です。
TIの部品の信頼性が怪しいものもありますからね。TIだからと言って云々・・・・
とにかく今回は運よく修理できたからいいものの、業務用サーバーを前提としてるSynologyとしてはもう少し真摯に客の要望を聞いてほしいものでですが、日本人のような”おもてなし”の心は期待できないので難しいとは思いました。

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