近年、様々な用途で使用する精密なセンサーが増えてきています。これらのセンサー装置開発において、オシロスコープやスペアナなどの測定器で評価できる小信号の限界を調べるため各測定器のノイズフロアを調べてみることにする。
調査対象の測定器
今回調査対象の測定器は現有の以下の3種類
| タイプ | 型名 | 特徴 |
|---|---|---|
| スペクトラムアナライザ | R4131B | ダイナミックレンジが広く、一般的に高周波の小信号測定を得意としている。 |
| オシロスコープ | MHO98 | 信号分解能が12bitであり、50Ω終端で測定することができるため小信号測定性能が向上している |
| マルチ測定器 | AnalogDiscovery2 | オシロや波形生成その他実用的な測定ができ、PCのユーザーインターフェースも使いやすい。しかも精度もそこそこある。 |



測定方法
- 測定器内部のノイズフロアを測定するため、入力コネクタは50Ωで終端する。
- 他の測定器と比較するため一般的なノイズ密度(V/√Hz)の単位に換算することにする。
- スペクトラムアナライザは高周波測定が得意な測定器のため周波数帯域が数GHzまで測定できるが、今回OPAMP増幅回路の評価にも使用することを前提として、スペアナでは10MHzまで、オシロスコープでは100kHzまでの帯域を測定することにする。
- スペアナではもともと横軸周波数で解析するが、測定値はdBmで観測することが一般的であるため、PCでデータと取り込みPCツールを作成して、占有帯域幅(RBW)を基にノイズ密度(V/√Hz)に変換する。
- なお、スペアナ自体にリニアスケーリング表示機能を持っているが、もともとスペアナとして持っている高ダイナミックレンジ測定をスポイルされてしまう(低いほうの測定限界が正しく測定できなかった)ので、logスケール(dBm)値から換算することにする。
- オシロスコープでは基本横軸は時間(タイムドメイン)なので、FFT解析を行い周波数軸に変換します。FFT解析時のパラメータに1binあたりの帯域(RBW)を取得し、電圧(V)/√(RBW(Hz))によりノイズ密度に変換します。
各測定結果
R4131B

このスペアナR4131Bはテンキーがついていないので、センター周波数などはダイレクトに数値設定できない。PCツールではダイレクトに数値入力設定できるので使い勝手は向上した。

おそらくRBWのフィルタの特性ばらつきが影響しているのかもしれない。
スペアナを使用した場合、測定器の世代間でも測定限界レベルに大きな違いはなかった。
【所感 R4131B】
スペアナではおおよそ5nV/√Hzくらいが限界。また測定原理的にもあまり0Hz近傍のフロアノイズが大きめに出る傾向となった。
MHO98


MATH機能でFFT解析表示にする
観測周波数は100kHz以下

オシロのFFT解析表示だけではノイズ密度(nV/√Hz)にすることはできないので、現在のFFT解析設定パラメータからRBWを取得し、ノイズ密度を計算表示する。
PCのツールは以下に置いておきますので、興味があればどうぞ!
【所感 R4131B】
今回使用したオシロスコープ(MHO98)は分解能12bit、チャネルの入力インピーダンスを50Ωに設定できるので、割と小さいレベルの測定ができるかもしれないと期待半分に思っていたが、本体の観測ノイズフロアが7nV/√Hzくらいとなっており、意外に健闘している。このレベルであればノイズ評価に使用できそう。
AnlogDiscovery2

このマルチ測定器はオシロモード動作させたとき、FFT解析可能であり、その時の結果表示単位として”nV/√Hz”の記載があった。アナログ測定は14bitで行うため、低信号の測定レンジに若干期待していたが、ノイズ密度は約1uV/√Hzとなっている。
【所感】
AnlogDiscovery2ではアナログ入力分解能がリアル14bitにも関わらず、1uV/√Hz弱なので、前述したスペアナ(R4131B)やオシロスコープ(MHO98)とはノイズフロアの電圧密度が150倍(43dB)ほど異なります。従ってこの小信号評価時、AnlogDiscovery2は有効活用できないかもしれません。
外部プローブの影響
これまで測定器本体の内部で生じる雑音電圧エネルギー密度を測定してきたが、本来外部の評価機(DUT)から発生している雑音電圧密度を測定する必要がある。
以下、MHO98にプローブ線を接続してみる。






【所感】
本来どのように測定すべきか明確な答え(方針)は未だない。
判るのは相当小さいレベルまで測定できているということ。
コラム:電源アースの影響
微小な信号を測定する際にはスプリングGNDプローブを用いることは前提ですが、測定器の電源GNDなどにも注意しておいた方がいい。ただ、これは必ずしも改善するとは限らないが、なんらかの影響はある。


1mVレンジで何かしらのノイズを受けている。
ちなみに何も接続していない時にはノイズ波形が出てこないため、プローブに乗っていると推測される。











