ループゲインを測定してみよう

1. はじめに

BD9064は一般的な非同期DCDCコンバータである。今回安価な測定器(Analog Discovery2)を用いてループゲインを測定してみる。

2. 評価回路

入力12V,出力6.13V, 電流MAX 2Aくらい。

3. レイアウト・パターン図

4. AnalogDiscovery2用ループゲイン測定アダプタ

DCDCコンバータの制御ループゲインを測定するためにAnalog Dicovery2のネットワーク機能を使おうとしたとき、アイソレーションされた信号源が必要となる。(ROHM試料 )

【測定の参考資料】
左の図はネットワーク・アナライザを用いた測定のセットアップ例を示します。オシロスコープでの例と同様、ネットワーク・アナライザに搭載されている信号発生器を、トランスを用いて帰還ループ内に正弦波信号を注入します。ネットワーク・アナライザの入力 R をループの入力へ、入力 A をループの出力へ接続し、A/R を測定することで位相余裕を求めます。広範囲な周波数帯域を測定する場合はトランスの周波数特性の影響が出るので注意が必要です。

トランスへの要求仕様

なるべく測定周波数範囲を広く取りたい

項目内容備考
測定周波数レンジ100Hz~10MHz 
信号源振幅電圧100mV~max 5V大きすぎると出力波形は歪む。
比率1:1なるべく1:1に近くてもOK
インダクタンス500uH大きい方が低い周波数までドライブしやすいから。 500uHで0.3Ω@100Hz これでも低いな
ループゲイン測定で必要とされるアイソレーション用のトランスの要求仕様

5種類くらいトランスの評価をおこなった結果以下のトランスが使えそうだとわかった。
この実験から使えそうなトランスは次に示すもの。

DCDCコンバータジャンクトランス

DCDCコンバータを分解したときのジャンクトランス
28mm × 28mm × 25mm(高さ)

Port [A]のインピーダンス特性

Figure 4.4-1 【Port A】のインピーダンス特性
100kHz1MHz
Ls572.4 uH808.8 uH
|Z|359.6 Ω5.229 kΩ
Rs1.098 Ω1.229 kΩ
Xs359.6 Ω5.082 kΩ
19.97 °80.5 °
θ89.83 °76.4 °
D0.0030530.241931
Q327.54814.133417

Port [B]のインピーダンス特性

Figure 4.4-2 【Port B】のインピーダンス特性
100kHz1MHz
Ls573.1 uH807.4 uH
|Z|360.1 Ω5.221 kΩ
Rs2.236 Ω1.235 kΩ
Xs360.1 Ω5.073 kΩ
74.3 °80.4 °
θ89.64 °76.32 °
D0.006210.243442
Q161.0254.107757
Port A,Bは同じインダクタンス

通過特性

Figure 4.4-3 通過特性
ネットワーク測定
100Hz~10MHzまでかなりいい感じの特性をしている。
信号源の振幅はMAX200mVくらい。
インピーダンス特性的には2MHzあたりで共振点を持つが、トランス特性としてはその影響が見えてこない!?

5. 測定・評価

上記のトランスを用いて「ループゲイン測定用アダプタ」を製作して、実際のDCDCコンバータのループゲインを測定してみることにする。なお、プローブの色はFRA5087と合わせている。

ループゲイン観測ポイント
AnalogDiscovery2を使った実際の配線の様子

6. 結果

回路動作条件:10V入力、6.133V出力、回路電源負荷:0.4A

Figure 5 1:ROHMのデータシートより(NFのFRA5087で測定したデータ)
Figure 5 2:AnalogDiscovery2で測定した値。
測定器Gain位相
FRA5087050度くらい
Analog Discovery20約52度
また、全体の波形の形状(傾向)も似ている

ROHMのデータシートかなり酷似してることがわかる。AnalogDiscovery2は結構使えるぞ!

7. 参考文献

  • 周波数特性分析器(FRA)による 位相余裕測定方法 (ROHM)

http://rohmfs.rohm.com/jp/products/databook/applinote/ic/power/switching_regulator/fra_phase_margin_appli-j.pdf


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